防水した方が雨が漏る | 堀建設社長 堀 弘 |
はずかしい話だが正直に言って、うちで施工し建物でも雨が漏ったものはある。でも、それはすべて防水工事をやった建物。防水なしで雨が漏ったことは1度もない。最初は、井上先生が防水なしで構わない、というからその言葉に従っただけだが、数をこなすにつれて自信もついてきた。 なぜ防水なしの方が雨が漏らないのか、難しいことは分からないが、職人の意識のような気がする。以前、某大手ゼネコンが施工したマンションの雨漏り補修を任されたことがある。防水工事のせいだ、という話を聞かされていたのだが、何のことはない。防水の下のコンクリートが無茶苦茶のためだだった。防水を剥がすとコンクリートに長靴の跡がついているし、木のスペースが入ったままで水の通り道になっている。「どうせ防水で上を仕上げるのだから」という仕事ぶりが読み取れた。 このマンションは特別にしても、仕上げに甘えてコンクリートの方がついおろそかになる、といった職人の意識は直そうと思っても、なかなか直せるものじゃない。 うちの防水なしの現場は、ごく当たり前の仕事の仕方で普通の生コンを打っているにすぎない。ただ集まった職人に防水なしだと告げると、職人が互いに「防水しないんだってよ」と話ながら気を引き締めて工事をしているようだ。 雨露をしのげるのが、建物の最低条件だと信じている。だから防水なしで施工する時、一応、10年間の保証書を出しているが、保証期間を過ぎたとしても問題が起きれば責任を持って補修するつもりでいる。もっとも、漏りことはまずないだろうが・・・・・・。逆に防水をした時に10年保証をするのは勇気がいる。絶対に漏らないと言える自信はないし、漏った場合、100万円の防水工事の補修に300万円かかることもあって負担が大きいからだ。補修費を全部背負える大きな防水業者は高くて我々には使えないため、自腹を切ることになってしまう。 今後も、防水なしの仕事は続けていく。施主にとっては防水工事費不要、我々にとっては補修費負担の危険回避と双方に利益のある方法だからだ。ただ施主の中には、「防水なしでも大丈夫。保証書も出します」と言うのに納得してくれない人が、まだ多い。大手ゼネコンの何々部長の言うことなら聞くのだろうが、堀の親父の言葉など信用してくれない。力のなさが、本当にくやしい。 |
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